「恵庭OL殺人事件」伊東秀子著より(その2)

「恵庭OL殺人事件」伊東秀子著より

著作では容疑者の大越美奈子さんは仮名で大妻になっている。千歳署で大妻の取調べは続く。

「四月二十一日の取調べ状況」
(大妻の陳述書より)

お昼になった。違う刑事が入ってきた。
「いいか。昼だからな。飯食えよ。」
「人一人殺しといて、『知りません』で済むと思うなよ。飯食えよ。いいか、こっちは食えって言ってんだからな。」
 午後、刑事が手に何か持ってきた。机の上に叩きつけた。
「お前の調書だ~」
 目の前で何度も叩きつけられた。怖くて目も開けられず、息をするのも苦しかった。刑事はガンガン怒鳴っている。机に何かを叩きつけている。時々口調が変わる。少し穏やかな口調になる。
「お前がやったんだろ?お前がやったんじゃないか。お前がやったんだなぁ。」
 私は首を横に振った。
「よ~く思い出してみろ。お前がやったんじゃないか。お前がやったんだなぁ。」
 顔を近づけて来る。私は首を横に振った。
「横に振れるんだったら縦にも振れるだろ?縦に振ってみろ。」
 怒鳴る。私は気分の悪さと息苦しさで何度か口にハンカチをあてていた。
「口をハンカチで押さえるな。手、ちゃんと膝に置け。お前はなぁ、そうやって言いたいことがあるのに言わないように口を押さえているんだ。」
「ごめんなさいって言え。なんで言えないんだ。ごめんなさいって言ってみろ。」机を叩く。
「橋本さんがどんな顔して死んでいったか思い出してみろ。」
 私は痔が悪いため、痔が痛くなってきてお尻をモゾモゾ動かした。
「どうした?さっきから尻モゾモゾして尻痛くなってきたのか。今日はな、わざと座布団どけておいたんだ。ん?どうだ、痛いか?」


 

北海道文化放送のニュース番組が、2021年4月15日に最高裁が大越美奈子の再審請求を認めないと決定したことを、当時の事件映像・弁護団の記者会見模様とともに報じている。https://www.youtube.com/watch?v=LKi77KosPUU

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