後世の評価

沖縄タイムスの連載小説で、安部龍太郎の「家康」が昨日から始まった。時代は桶狭間の戦いの直前であり、家康が今川義元の人質であった頃から物語は展開していく。青年家康が今川家の配下として織田信長勢と対峙している頃である。

徳川家康を題材とした小説といえば代表的なものに山岡荘八の「徳川家康」全26巻があるが、この作品は世界でも類を見ない長編である。個人的には山岡荘八が描く家康が好きで、この「徳川家康」全26巻を2回読み通した。好きだから読み通せるし、これからも繰り返し読んでいく。

太平洋戦争時に従軍記者だった山岡荘八は、戦争終了後、二度とあのような悲惨な戦争を起こしてはならないと「徳川家康」を書き上げた。そのなかで、家康を平和を希求して戦乱の世を戦い抜きそして平和への願いを成し遂げていく人物として描いている。

江戸時代に外様藩として苦汁をなめさせられた薩摩・長州が、明治維新後、神様のように崇められていた家康を狸おやじのイメージにすりかえた。しかし、太平洋戦争終了後、家康は平和を求めて戦い260年の天下泰平をつくったヒーローとして小説の世界に現れ、再び大きな尊敬を集めるようになった。

後世の人々は、平和を求めて平和を作り上げた人物をヒーローにする。国家を戦争に導いた政治家をヒーローにすることはない。むしろ悪名を与える。後世の人々の口はふさげない。

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