うれしい気持ち

スーパーの入り口に向かって歩いていると、70歳前後の一人の婦人がスーパー横の通路の段差に腰を下ろしている。この婦人、確か4・5日前にも同じ場所に座っていた。横の地面にはビニール袋の荷物が2個あり、中には彼女の所持品らしき物が入っているようである。

スーパーで買い物を済まして車に戻る途中また目をやると、この婦人は立ち上がって少し歩き回り、道に落ちた小さなゴミを傘の先でつついている。白っぽい小さなゴミが硬貨ではないかと確認しているようにもみえる。着ている服は粗末ではあるが、そんなに汚れている感じでもない。だけど、元の座り場所まで歩くその姿はひどく瘦せている。しばらくその姿をながめている。

 

座っている彼女の横を通るときに、一言声をかけてみる。

「おばさん、食べ物はあるね~?」

すると、この婦人はニコニコしながら答える。

「はい、あります」

「あ、そうなんだ、それはよかった」

車に戻り、財布から1,000円札を一枚取り出す。運転席の窓を開け、車を走らせてこの婦人の座っている前に停める。運転席のすぐ横に、この婦人がいる。

 

窓から1,000円札を差し出し、一言いい添える。

「これ、あげるよ」

「どうも、ありがとうございます」

両手で押し頂くように千円札を受け取る婦人の顔は、心を許したかのような笑顔である。

やはり、十分に食べていなかったのだろう。こんなにうれしい気持ちになるのは久々である。朝食と昼食はとらない生活なので、その分の生活費が彼女に回ったと思えばよい。

 

1、2時間前の出来事である。うれしい気持ちはまだ続いている。

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