所得再分配のひずみ

かつて、日本は一億総中流社会だと言われていた。日本の大方の人々が自分自身のことを中流だと意識していた。

ところが、今はどうだろう。中流層の人々がごっそりと抜け落ちて、いるのは少数の裕福な人々と大多数の貧困層である。社会のシステムが壊れてしまっている。

昨日の道端で出会った年配のやせ細った婦人が気にかかる。

あの婦人は、年金受給の年齢にとっくに達しているはずなのに、どんな個人的事情があるかは知らないが、少なくとも社会保障の恩恵は彼女に届いてはいない。

なぜ、このように経済的に恵まれない不幸な人々が数多くなったのか。

その最大の理由は、所得再分配のひずみである。かつて、日本では裕福な人々は多めの税金を負担し、裕福でない人々は少なめの税金を負担するという累進課税の仕組みが機能していた。しかし、この仕組みはこの30年ほどの間に徐々に改変されて、今や無残な形に成り果ててしまった。金持ちはより豊かに、貧しい人々はより貧乏に。これが、日本の税制の方向性である。社会保障費の削減と消費税の切り上げは、貧富の差をさらに拡大していく。

政府は消費税の切り上げは社会保障費を補うためというが、実際はそうではない。低下する法人税の穴埋めと、低下する富裕層の税負担の穴埋めが大方の使い道である。

政府の経済政策、財政政策、とりわけ所得再分配の理不尽で不合理な政策が、社会的恩恵からはみ出た不幸な人々を生み出していく。その不幸な場面に出くわした人が、手を差伸べて助けていくでは切りがない。根本的な原因からの解決が必要である。

それは、所得再分配のひずみの解消である。かつての健全な累進課税の仕組みに戻していけばよい。

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