学生の頃、警備会社のアルバイトで夜間の交通整理をしていた。日本舗道という本土企業が宜野湾市の伊佐交差点で道路工事をしていて、そこで相方と二人で片側交互通行の誘導を担当していた。普天間方面から走ってくる車両を誘導灯を振って停止させて、時間がたって待機車両がたまったら伊佐交差点に走らせるという作業であった。
夜が深まったころ、遠方から走ってくる一台の車両を誘導灯を振って止めようとする。ところが、一向にスピードが緩まない。これは変だ。車両通行帯の真ん中にいる自分に向かって突っ込んでくる。とっさに側に飛びのいて車を避けた。車は直前に気づいて作業員のいる作業現場を何とか避けて歩道に乗り上げて木にぶつかって止まった。車は軽トラックである。中から、酒の臭いのする中年のおじさんが出てきて、工事の現場監督と話をする。
「何とか見逃してくれないか。」
「いや、それはできない。警察に電話をする。」
「お願いだから、警察は呼ばないでほしい。捕まったら、免許を取り上げられて仕事ができなくなる。お願いだから、頼む。」
「いや、できない。警察を呼ぶ。」
酒臭い中年のおじさんは、聞き入れてもらえないとわかり大声で叫びはじめた。
「あんたたちは情けというものがないのか。クンジョウタカラー、や~。」などなど、暴言が続く。
しばらくして、彼はパトカーで連れていかれた。
その日の、さらに夜が更けて未明になったころ、一台の普通乗用車がまたまた同じように突っ込んでくる。側によけて危うく難を避けた。ところが今度は、その車は作業現場にそのままけっこうなスピードで突っ込んでしまった。作業現場は舗装のための大きな穴が掘られていてその穴に落ちて止まった。そこにたまたま作業員がいなかったのは幸いであった。
その車のドアが開き、中から出てきたのが大柄な黒人の米兵である。酒の臭いがする。何やら英語で現場監督に話している。現場監督は彼の話しかけに何も答えない。ただ、まわりの作業員に穴の中にはまっている車を出すようにと指示をする。車を何とか穴から出すことができ、そのあと警察を呼ぶのだろうと思ったが、同じ現場監督が今度はそれをしない。見逃すようである。黒人米兵は少しの礼を言いその車に乗ってそのまま立ち去っていった。
警察は、歩道から車両通行帯に押し出された抗議市民を守る責任がある。
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