ノウハウ

「復唱授業の○○○です」

かつて、家庭教師の○○○がこんなテレビCMを流していた。理科・社会の指導を復唱授業で行うのだという。

「教科別指導の○○○です」

家庭教師の○○○はこんな広告も出していた。教科別に分けて家庭教師を派遣するのだという。

家庭教師の○○○は「がんばれコール」を行いますという広告がチラシに出た。とうとう、ここまで真似するか。「がんばれコール」とは、スタディが考案して行っていた家庭教師の先生が訪問日以外に生徒に電話を入れて勉強の進み具合を確認するシステムである。システムの名称までそのまま使っているよ。

ここまでシステムを真似するので、スタッフの一人に家庭教師の○○○沖縄支店に苦情を伝えに行かせた。

「塾長、○○○の沖縄支店長は熊本大学を卒業した社会人で、直接会って苦情を伝えると謝っていましたよ。」

「家庭教師の○○○沖縄支店」が「琉球大学○○○」として運営されていて、○○○グループが全国的に急拡大していた頃である。急拡大のため管理スタッフが十分揃ってなかったからであろうが、指導システムや具体的指導法は、沖縄資本で沖縄のみで運営される家庭教師センタースタディの方法をずいぶん真似していた。それを○○○グループ全体のシステムとして取り入れていた。

「△△君、あんたは○○○から送られてきたスパイだろう。」

それまでニヒルな冷笑を漂わせていた△△君の顔が途端に崩れて動揺している、明らかにうろたえている。

「何をいうんですか、スパイなどと驚くようなこと言わないでくださいよ。全然違いますよ。」

これまでのニヒルで傲岸な態度が、卑屈な愛想笑いと媚を売る態度に変わっている。

やはり、この人物はスパイだ。こんな事例がよくあるのですぐに気づく。

数日後、彼は家庭教師を辞めると告げてきた。

ノウハウは経験の蓄積と熟考・反省・閃きが作り出していくものである。簡単に真似できるものやそうでないもの、簡単に理解できるものやそうでないものがある。

一つのノウハウが他の人に理解されにくい場合、ときにそれが大きな競争力を意味することがある。理解されにくいから誰もそれをやらない。理解しやすく実行しやすいことが比較優位を保証することはない。

比較優位は理解されにくいところから生まれる。招く反発は、ノウハウが有効であり競争力があるということの裏の一面である。

人は自分の器の範囲でものごとを理解する。自分の器の範囲を超えた部分を懸命に理解しようとして、それでも理解できない場合は、あとは信じるか信じないかである。何を信じるかを決めること、これも能力のひとつである。

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